
外は思っていたより寒かった。
一瞬肩をすくめてから背筋を伸ばして歩き出す。
自然と視線が上を向いている自分に気付いて、マスクの下でフフフと口角を上げてしまう。
金曜日。
いつもなら、来週に持ち越したくない仕事を終わらせるべく残業になりがちだけど、今週の私は違う。
定時で退勤するためにしっかりと調整してやったのだ。
毎週そうすれば、毎週残業しなくて済むのかもしれないけれど、まあそれはまたの機会に考えるとしよう。
無意識に足早になっていたのか、あっという間に駅に到着。
早歩きしたいときは楽しみを作るといいのかも。
ホームには向かわず、駅ビルの自動ドアを抜けると、マスク越しに美味しい香りが出迎えてくれた。
メロンパン、この時間だとまだ残ってるのね。
本命の用事を済ませたあとに買って帰ろうかな。
通り過ぎかけたけれど、思い直してお店の人に声をかけた。
「いつも売り切れでお店が終わってるので、今日はラッキーです」
「ありがとうございます(^^) いつも、このぐらいの時間で終わってるんですよ。今日はお仕事が早く終わったんですか?」
「早く終わらせました(^_-) 2個ください」
残っていた2個を受け取る。
今すぐ食べたら、すごーく美味しいだろうな。でも、ガマンガマン(^^;;
食べたい気持ちとスキップしたい気持ちを抑えつつ、書店のフロアに入った。
フフフフフ......と笑みがこぼれる。
手帳売り場にたどり着くとワクワクが止まらなかった。
会社の最寄駅にある書店は、地元の書店と比較にならないほど大きくて、手帳の品揃えも充実している。
しかし、普段は時間がなくてなかなか寄れなかったのだ。
どれにしよう。これにする? あれにする?
あれはYouTubeで見たやつだし、これはSNSですごく見かけるやつだわ。
今この売り場にいる人たち、みんな知ってる人だったりして、フフフ。
マスクをしていなかったら通報されてるかもしれない、フフフ。
売り場を何周もしてじっくり堪能したのち、お迎えする手帳を決めた。
憧れのあの人とお揃いにしちゃった。
仕事の調整は大変だったけれど、もうその疲れは吹っ飛んでいる。
さあ、帰るよー!
メロンパン食べて、新しい手帳を愛でよう。
今日は嬉しいなぁぁ(^^)
※フィクション(作り話)です。

